[一緒に洋書 20] ニュアンス徹底解説で、面白い簡単な小説を読む

Autumn leaf on a book 英語レッスン
一緒に読んでみよう!

単に英語を翻訳するだけでなく、言葉の背景、応用、ニュアンス等、解説がないと分かりづらい部分を説明します。教科書では分からない英語のソウルだ。

今回は、The hell out of のニュアンス、better off の表現の[off] についての説明。仮定法で [were] を使う場合。そして、[then] の 便利な用法などを解説!

「初秋」ロバート B. パーカー

He shrugged. We were through Reading Square almost to 128.

少年は肩をスクめた。我々はリーディング・スクエアを通過中で、128号線まであと少しのところだ。

“Can I turn on the radio now?” He said.

 「もうラジオつけても良い?」少年が言った。

“No,” I said. I know I was being churlish, but the kid annoyed me.

「ダメだ」と俺は言った。意固地になっているのは自分で承知していたが、少年は俺をイラつかせた。

Note

Churlish のここでの意味は、「不機嫌で、意地悪い、無愛想な」だ。Churl とは中世社会で下級民を指す、育ちの悪い卑屈さと不機嫌さが混ざった様な感じだ。

In his whiny, stubborn desperation he irritated the hell out of me.

少年の泣き声調、絶望感の混じった頑固さには本当にイライラさせられたのだ。

俗語

the hell out of 人 の強調パターンは口語では頻出する。以下の他動詞とのコンビネーションの例を見て感じをつかもう:

The boy annoyed the hell of me.

She scares the hell out of him.

It surprised the hell out of her.

The news shocked the hell out of everyone.

Mr. Warm. There’s no such thing as a bad boy.

「優しいおじさん」だぜ。本当に悪い子供は存在しない、なんてね。

アナ訳

これは、意固地になっている自分に対しての皮肉を、独り言の感じで言っている訳だ。「悪い子供なんて存在しない」は、優しさのカタマリのような「Mr. Warm」がいかにも言いそうな、使い古されたセリフをつけている訳だ。

The kid almost smirked.

少年の口元には、嘲笑の兆しがあった。

Yojo
Yojo

Almost, but not quite.

「ほとんどそうだけれど、そこまでには行っていない」 

微妙だよね。

“Do you know why I’m taking you to your mother?” I said.

「俺がどうして君をお母さんのところへ連れていくのか分かるか?」俺は聞いた。

“To get a hundred bucks.”

 「100ドルもらいたいからでしょ」

“Yeah, but it’s more than a hundred bucks. It’s a way of thinking about things.”

 「そうだ。でも100ドルの為だけじゃない。物事の考え方の問題なんだ」

コメント

この “It” は、「母親のところに連れていく理由」だ。

The kid shrugged. If he did it enough, I would stop the car and bang his head on the pavement.

少年は肩をスクめる。俺の我慢の限界を超えて肩をスクめ続けたら、俺は車を停めてガキの頭を道路にぶち当てることになる。

“When all your options are lousy,” I said, “you try to choose the least lousy. Apparently you are equally bad off with your mother or your father. Apparently you don’t care which place you’re unhappy. If I take you to back to your father you’re unhappy and I get nothing. If I take you back to your mother you’re unhappy and I get a hundred bucks. So I ‘m taking you back to your mother. You understand? “

「選択肢が全て良くない場合は、その中でも一番マシなものを選ぶんだ。母親の所でも、父親の所でも、悪い状況なのは明らかに同じだ。どちらの状況で不幸な気持ちになるのか、明らかに君は気にしない君を父親の所に連れて帰れば、君は不幸で、俺は何も得ない。母親の所に君を連れて行けば、君は不幸で、俺は100ドル稼げる。だから君を母親の所に連れて行くんだ。分かるか?」、と俺は言った。

Point

Bad off とあるが、もっと良く耳にする表現は Worse off 、または、Better off だ。

考え方としては同じで、「状況の良し悪しの」グラフをイメージしてみよう。良ければ良いほどグラフは上に登っていく。つまり [off] とは、どん底から上がっている状況を指すのだ。

例:We will be better off now he is gone. 奴がいなくなったから状況は良くなるだろう。

そう考えると、裕福であることを well off と表現するのも納得できるだろう

“Sure, you want the hundred.”

「うん、100ドルが欲しいってことでしょ」

“It would be the same if it were a dime. It’s a way to think about things. It’s way not to be shoved around by circumstances.”

「これが10セントだったとしても同じことだ物事の考え方の問題なんだ。状況に振り回されるのを避ける考え方だ」

Note

例の仮定法だ。セリフの中なので本来ならば現在形であるとこが、過去形に変えられていることで、実際とは違う状況で仮定していることが分かる。

現実は100ドルが報酬金だが、それがもし10セント(実際とは違う)だとしても同じだということだ。

ここでさらに気がつくのは “was” であるはずのところが “were” となっている。どちらでも使用可だが、Were を使う場合の方が明らかに現実と違う場合のニュアンスが大きいと理解しておこう。

例:If I were you, I would not do it. もし僕が君であったなら、それはしない。

現実世界では、「私」が「あなた」ではなるのは、いくら仮定としてでも「あり得ない」、ので、この場合は必ず “were” を使うのが正解。

“And Mommy will give you money,” he said. “Maybe you can fuck her.”

「そしてお母さんからお金をもらう。たぶんお母さんをファックできる」と少年は言った。

He checked me carefully, looking sideways at me as he said it, to see how shocked I’d be.

少年は、そう言いながら、俺がどれほどショックを受けるのか見ようと、注意深く横目で俺を観察した。

“Your father suggested the same thing,” I said.

「君のお父さんも同じ提案をしてたな」と俺は言った。

“Your mother into sex, is she?”

「君のお母さんは、そんなにセックスが好きなのか?」

The kid said, “I dunno.”

「知らない」と少年は言った。

Note

I dunno. = I don’t know. 聞こえる音どうりに表記している。

“Or you figure I’m so irresistible that it’s inevitable.”

「それとも、俺がそんなに魅力的だから、そうならざるを得ない、と君は思うからか?」

Info

figure は理解する・予想する、と言う意味。次の文にも出てくる。

 It‘s inevitable の it は 母親と関係を結ぶことを指す。

so ~ that 構文とか言うけれど、感じで自然に分かるよね。

The kid shrugged. I figured I could take maybe two more shrugs before I stopped the car.

少年は肩をスクめた。あと二回ほど、肩をスクめたら、我慢の限度を超えて車を止めるぞ、と思った。

アナ訳

車を止めてガキの頭をかち割る、その前に、あと二回ぐらいは肩をスクめる動作を我慢できる。

= あと2回が限度。それを超えたら車を止める。

“I don’t want to talk about it,” he said.

「そんな話はしたくない」と少年は言った。

“Then you shouldn’t have brought up,” I said.

「じゃあ、そんな話を持ち出さなければ良かっんだ」と俺は言った。

コメント

“then” というのは全く便利な言葉だ。こうして文頭に付けることも、文尾に付けることもできる。「じゃあ」、とほぼ同じ感覚で使えるのだ。

shouldn’t have の用法は、以前の投稿を参照してみて。また仮定法の話ですが…。実際に「話は持ち出されてしまった」わけだからね。

He was silent.

少年は黙っていた。

まとめ

笑ってしまう会話があるね。コメディの一形態として、全てを文字どうり、litteraly に受け止め続けるってのを聞いたことがあるが、スペンサーの会話にもそれに似たユーモアがある。

少年の意図的にショッキングな言葉を、諭すことも、うろたえることもなく、真面目に受け止めるは、皮肉で、おかしくて、そして効果的でもある。

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