英語でコミュニケーションするには、日本語へ直訳をする必要はない。言葉を超えた事象や抽象が分かり、そして分かってもらえれば良いわけだ。
このシリーズの僕の日本語訳は、意味の最も近い、相応する言葉を選ぶと言うよりは、その言葉が伝えるエッセンスを掴むのであれば字義通りの訳を超えて日本語にしている。
こうやって個人のブログで書いている場合「翻訳」と言う枠としての責任がないので、自由に「転換」してしまっても怒る人もいないだろう。
そんな「転換」に慣れ、どうしてそう解釈するのかの説明を読めば、英語を読むだけでなく、話す時にも、内容自体をいろいろな角度で見て、表現できる助けになることを期待している。どうだろう?
今回は、「意思」を表現する 「Would」、「seem」や「Poise」のニュアンス、「What if 」の用法、そして「me either」の表現を見ていこう。
「初秋」ロバートB. パーカー
“It’s over there,” Paul said, “How come you wouldn’t let her pay for it?”
「レストランは向こうだよ」と、ポールが言った。「どうしてお母さんに支払わせなかったの?」
Would は「意思」を示す言葉として、過去形のまま使える便利な言葉だ。

Would you like to go for a walk with me?
一緒に散歩に行かない?

Yes, I would.
行くよ。
“It didn’t seem the right thing to do,” I said.
「それが正しい事だと思えなかったからだ」、俺は言った。
Seem = そうのように見える、感じる
(it) Seems to me, ~ と文を始める事も出来る。「私にはそう思われる、以下の事は 〜」という具合だ。
“Why not? Why should you pay? She’s got plenty of money.”
どうして?どうしてあなたが払わなければならないの?お母さんにはお金がたっぷりある」
“If we order careful,” I said, “I can afford this.”
「値段に気をつけて注文すれば、俺にも払える」
これは、もちろんスペンサー風の冗談だ。
The waiter came. I ordered a Beck’s beer for me and a Coke for Paul. We looked at menu.
ウェイターが来たので、俺はベックビール、そしてコーラをポールのために注文した。そしてメニュを眺めた。
“What can I have?”
「何を注文して良いの?」、とポールが聞いた。
“Anything you want,” I said. “I’m very successful.”
「何でも良いよ。俺は羽振りが良いんだ。」
We looked at the menu some more.
我々はメニューをさらに眺めた。
The waiter brought the beer and the Coke. He stood with his pencil and paper poised.
ウェイターがビールとコーラを運んできた。鉛筆と紙を手に持って立っている。
Poise = バランスをとって持ち上げたり、手をぶれないように捧げもったり、今にも何かを始めるように用意している様子を指す。
またPoisedと形容詞的に使うと、「きちんと用意して、整った」と言う「見た目の」ニュアンスとして使える事も考えよう。

“You order?” he said.
「注文は?」、とウェイターが聞く。
正しくは、”Would you like to order?” となるべきだが、英語がイマイチな移民のウェイターと言う状況だと思われるので、「ブロークン・イングリッシュ、broken English」なわけだ。
“No,” I said. “We are not ready.”
「いや、まだ決まってない」、と俺は言った。
“Okay,” he said and went away.
「分かりました」、とウェイターは言い、テーブルから去った。
Paul said, “I don’t know what to have.”
「何を注文すれば良いのか分からない」、ポールが言った。
I said, “What do you like?”
「何が好きなんだ?」、と俺は聞いた。
Paul said, “I don’t know.”
「分かんない」、とポールが言った。
I nodded. “Yeah,” I said, “somehow I had a sense you might say that
俺はうなずき、「うん、何故か、そう言うんじゃないかと思った」、と言った。
He stared at the menu.
少年はメニューを見つめた。
I said, “how about I order for both of us?”
「じゃ、俺が2人分注文しようか?」、と俺は言った。
“What if you order something I don’t like?”
「僕が嫌いなものを頼んだらどうするの?」
What if ~ =〜だったらどうする?、は誰しもする質問だ。“What ifs” と名詞として使われるぐらいだ。
“Don’t eat.”
「食べなきゃ良い」
“But I’m hungry.”
「でも、僕はお腹が減ってる」
“Then, decide what you want.”
「じゃあ、自分で何が食べたいのか決めるんだ」
He stared at the menu some more.
少年はメニューをさらに凝視した。
The waiter wandered back. “You order?” He said.
ウェイターが一回りして戻ってきた。「ご注文?」と聞いた。

“wander” は、「当てずもなく彷徨う」ニュアンスがある言葉だ。ここでこの動詞を使うだけで、ウェイターは急いでいないのが分かる。つまり、レストランが混んでいない様子、さらには、そんな状況で、ぶらりと歩くウェイターのタイプまで描写している、絶妙な動詞の選択だと思う。
I said, “Yes. We’ll have two orders of Peking ravioli, the duck with plum sauce, the moo shu pork, and two bowls of white rice. And I will have another beer and he’ll have another Coke.”
「うん、餃子と、プラムソースのダック、ムーシューポーク、それと、ご飯、それぞれ2人前、そして、ビールをもう一本、この子にコーラをもう一杯、頼む」、と俺は言った。
2 (10) orders of ~ = 〜を2(10)人前 食べ物を注文するときに知っていると便利な表現
The waiter said, “Okay”. He picked up the menus and went away.
ウェイターは「分かりました」、と言って、メニューを回収して去った。
Paul said, “I don’t know if I’ll like that stuff.”
「そんなもん、好きかどうか分からないよ」、とポールが言った。
Stuff はすべての物を一般に「モノ」としてくくる言葉だが、食べ物を”Stuff”と呼ぶことで、「得体の知れない(食べ)物」のニュアンスがある。ここでは「そんなもん」としてみた。
“We’ll find out soon,” I said.
「すぐに分かる」、と俺は言った。
“You gonna send my mother a bill?”
「お母さんに請求書、送るの?」
“For the meal?”
「この食事の代金をか?」
“Yes.”
「そう」
“No.”
「いや、請求しない」
“I still don’t see why you want to pay for my dinner.”
「何で僕の夕食代まで払ってくれるのかよく分からない」
“I’m not sure,” I said. “It has to do with propriety.”
「俺もよく分からんが、『物事の正しさ』、のようなものだ」
A has something to do with B = AはBと何らかの関係がある、という表現だが、somethingが省かれている、と読もう。
The waiter came and plunked the ravioli on the table and two bottles of spiced oil.
ウェイターが来て、餃子と二つのラー油の瓶を無造作にテーブルに置いた。

Plunk は、「プランク!」って音が聞こえる感じで、物を置く、落とすと言う言葉だ。文脈で、「無造作」の感じがよく分かる。先ほどの”wander’と合わせて、このウェイターの様子が目に浮かぶよね。
“What’s propriety?”
「物事の正しさ、って何?」
“Appropriateness. Doing things right.”
「適正さ。物事をちゃんとやる事だ」
He looked at me without any expression.
少年は表情のない顔で俺を見た。
“You want some raviolis,” I said.
「餃子、少し食べるか?」と俺は聞いた。
“Just one,” he said, “to try. They look gross.”
「試しに一つだけね。なんかキモ悪く見えるし」
“I thought you liked eating here.”
「ここで食事するのが好きなんじゃなかったっけ」
“My mom just said that. I have never been here.”
「お母さんが勝手にそう言っただけ。ここには来た事がないよ」
Just は「だけ」と訳されるが、「勝手に」というニュアンスもあるのを知ろう。

Hey, there, dog! You can’t just walk into my room. Knock, please!
ちょっと、そこの犬!勝手に人の部屋に入ってこないでよ。ノックぐらいしてちょうだい。

Excuse me!
失礼!
“Put some of the oil on it,” I said. “Not much. It’s sort of hot.”
「ラー油を餃子につけるんだ。少しだけね。結構、辛いから」
He cut his ravioli in two and ate half. He didn’t say anything but he ate the other half.
少年は餃子を2つに切って、半分食べた。何も言わなかったが、残り半分も食べた。
The waiter brought the rest of the food.
他に注文した食べ物をウェイターがまとめて持ってきた。
We each ate four of the raviolis.
我々はそれぞれ四個づつ餃子を食べた。
“You put the moo shu in one of these little pancakes, see, like this. And you eat it.”
ほら、こうやって、ムーシューポークをこの小さなパンケーキに入れるんだ。そして食べるんだ。
“The pancake doesn’t look it’s cooked,” Paul said.

「そのパンケーキ、生みたいに見える」、とポールが言った。
I ate some moo shu pork. He took a pancake and did as I showed him.
俺はムーシューポークをいくつか食べ、ポールもパンケーキを手に取り、見せて上げた通りにやった。
I said, “You want another Coke?”
「コーラもう一杯飲むか?」、と俺は聞いた。
He shook his head. I ordered another beer.
少年は首を振る。俺はビールをもう一つ注文した。
“You drink a lot?”
「結構呑むの?」
“No,” I said. “Not much as I’d like.”
「いや。呑み足りてないぐらいだ」
He speared a piece of duck with his fork and was trying to cut it on his plate.
少年はダックの一片をフォークで突き刺して、皿の上で切ろうとしていた。
“That’s finger food,” I said. “You don’t have to use your knife and fork.”
「それは手でつまんで食べるものだ。ナイフとフォークを使う必要は無い」
He kept on with the knife and fork.
少年はナイフとフォークを使い続けた。
He didn’t say anything.
彼は何も言わない。
I didn’t say anything.
俺も何も言わなかった。
We finished eating at seven fifteen. We arrived back at his house at seven thirty.
我々は七時十五分に食事を終わらせ、七時三十分には少年の家に帰り着いた。
I parked and got out of the cat with him.
俺は車を停めて、彼と共に車から出た。
“I’m not afraid to go in alone,” he said.
「一人で家に入るのは怖く無いよ」、と少年が言った。
“Me either,” I said. “But it’s never any fun going into an empty house. I’ll walk in with you.”
「俺もだ」、と俺は言った。「でも誰も居ない家に入るのは決して楽しい事じゃ無い。君と一緒に行くよ」
Me either は否定の文に対して、「私もそうではない」、つまり“Me too”の否定バージョンであり、正確には文法的に正しくはないとされるが、実際の会話ではよく聞く表現ではあるし、カジュアルな場面では使っても構わない。
ちなみに Me neither とも言うことが出来る。
“You don’t have to,” he said. “I’m alone a lot.”
「そんな必要は無いよ。僕は一人で居る事が多いんだ」
“Me too,” I said.
「俺もだ」、と俺は言った。
We walked into the house together.
我々は一緒に家に入った。
まとめ
今回はほぼ会話文だったこともあり、すこし長めの投稿で、第5章を終わらせました。
シリーズ第25回目。皆んな付いてきてる?英語のリズム慣れてきただろうか?
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