ポピュラー小説の会話を分析して、英語のエッセンスを掴んでいこう。
日本語訳としては原文の言葉に相応する訳をつける必要があるが、自分で英語を読む場合、言葉のニュアンスと、伝達情報のソウルを感じられればいい訳なので、「意訳」が基本だ。「意」とは「意思」、言葉を発した人の伝達したい内容だ。
「意訳」を自然に出来るようになるには、情報を多角度から見る力を養うのが必須。それはバイリンガルの力だ。英語から日本語、日本語から英語へと、内容のエッセンスを生き生きとアウトプットできるようになるコツはある。Yojo流「アナ訳」を体感することで、そのコツが掴めるようなる!!今回の表現は、「Barely」、「take hold」、「The thing is ~」、「get even」などを見ていこう。
「初秋」ロバート B. パーカー
She said, “Yawn.”
「あくびが出るわ」、とスーザンが言った。
よく使われる冗談じみた表現だ。相手がつまらない話を延々としている時に、「あくび」と言って、「退屈だ」と言うわけだ。

バスケなど、スポーツをあまり観ない僕も全くの同感である。
The sleeves of her black wool turtleneck were pushed up on her forearms and the skin of her forearms was smooth and white in contrast.
彼女の黒のウールのタートルネックの袖は前腕に押し上げられ、なめらかで白い腕と対照的だ。
On a gold chain around her neck was a small diamond,
首にかかったゴールドのチェーンには小さなダイアモンドが下がっている。
She removed her engagement ring when she’d divorced and had the stone reset.
離婚した時に婚約指輪を外して、そのダイアモンドをネックレスに付け替えてもらったたのだ。
She’d had her hair permed into a very contemporary bunch of small Afro-looking curls.
彼女の髪はパーマがかけられ、たくさんの小さなアフロのようなカールになっている。
She’d had = She had had…. 過去完了を使っているのは、過去形の物語の中の過去を指す。「ダブル過去形」だ。
Her mouth was wide and her big dark eyes hinted at clandestine laughter.
彼女の口元は含み笑いを浮かべ、大きく黒い目は内緒の冗談を考えているみたいだった。
ここでの Her mouth was wide は彼女の口が大きのではなく、口を開けずに笑顔を作って、口が横にワイドに引っ張られている様子だと解釈して、「含み笑い」と訳した。
「Hint」(ヒント)を動詞として使うのは便利だ。聞けば、意味はわかると思うが、自分で使えるように身につけよう。
Hint at ~ = 〜を暗に示す。間接的に示す。
“On the other hand,” I said, “Russell ought to see you.”
「その一方で、ラッセルは、君を見るべきだったな」
これは前のセンテンスで(前投稿)スペンサーがスーザンにビル・ラッセル選手を見れればよかったのに、と言ったのを逆にして、ラッセル選手は(見るに値する美しい君を)見るべきだった、という、お世辞のジョークだ。
“Gimme a peanut,” she said.
「ピーナッツちょうだい」、と彼女は言った。
Gimme = Give me 実際に聞こえるように綴っている。
The final score was 130 to 101 and the Garden was nearly empty when the buzzer sounded.
最終特点は130対101で、終了のブザーが鳴った時には、ガーデンは、ほぼ空の状態だった。
The Garden = マディソン・スクエア・ガーデン (有名なニューヨークのMSGのボストン版)
Sound 動詞は「音を出す」に加えて「聞こえる」と言う意味もある。

It sounds strange.
それは妙に聞こえる。
Buzz (バズ)は昆虫の羽音のような音、あるいはアルコールなどから来る「酔い」、また「反響がある・評判が出ている」を指す言葉だ。カタカナで「バザー」と言わず、「ブザー」というのが面白い。正確な発音により近いのか?

It was nine twenty-five. We put on our coats and moved towards exits.
時間は九時二十五分だった。我々は上着を着て、出口に向かった。
It was easy. No pushing; No shoving. Most people had left a long time ago.
押し合いへし合いもなく、楽に出れた。 ほとんどの人はとっくに会場を出てしまっていた。
In fact most people hadn’t come at all.
実際、そもそも試合を見に来た人自体が少なかったのだ。
実際、ほとんどの人は全く試合を観に来なかった。
At all = 全く
ゲームを見に来て途中で帰った人に対して、そもそもゲーム自体を見に来ることをしなかった(100%=all 来なかった)
“It’s a fine thing that Walter Brown’s not around to see this,” I said.
「ウォルター・ブラウンがこんな事態を見ないで済むのは良かったよ」、と俺は言った。
Walter Brown はボストン・ケルティックスの最初のオーナーだ。
“In the Russell years you had to fight to get in and out.”
「ラッセルが現役だった頃は会場に入るのも出るのも大変だったんだ」
“That sounds like a good time,” Susan said. “Sorry I missed it.”
「そんな楽しそうな頃を経験できなかったのは残念だわ」、とスザーンは言った。
On causeway Street, under the elevated, it was very cold.
コーズウェイ通りの高架の下はとても寒かった。
The elevated とは「上げられた」= 「高架」を意味する、ボストン市内を走る「ライトレイル・路面電車」のレールが高架になっている部分だ。
有名なのはシカゴの “The El / The L”だ。(the elevated の略 『エル』)

I said, “You want to walk up to The Market? Or shall we go home?”
「マーケット」まで歩いて行く?それとも家に帰ろうか?」と俺は聞いた。
“it’s cold,” Susan said. “Let’s go home to my house and I’ll make us a goodie.”
「寒いから私の家に帰りましょう。何か美味しい物を作るわ」、とスーザンが言った。
She had the collar of her raccoon coat turned up so that her face was barely visible inside it.
たぬきの毛皮のコートの襟は立ててあり、彼女の顔は埋もれてほとんど見えない。
The heater in my MG took hold on Route 93 and we were able to unbutton before we got to Medford.
93号線に乗った所で、MGのヒーターがでやっと効いてきたので、メッドフォードに着く前にコートのボタンを外すことが出来た。
Take hold ~ は「手に取る、手にする」という意味から派生して、「グッと効果が出てくる」という感じの表現になる。
“The thing about the kid,” I said, “is that he’s like a hostage. HIs mother and father hate each other and use him to get even with each other.”
「例の子供の事だけれど、まるで人質みたいに扱われている。母親と父親は憎み合っているものだから、子供を使ってお互いにやりあってる」、と俺は言った。
The thing about ~ is とか、The thing is の Thing は「件、要件、要点」に近い。

The thing about the plan is that I don’t think it was well thought.
例の計画の件についてなんだけれど、あまり良く考えられていないように思うわ。
Get even = even /同じレベルになる = やられたらやり返す = 互いにやりあう

Suzan shook her head. “God, Spenser, how old are you? Of course they do that. Even parents who don’t hate each other do that. Usually the kids survive it.”
スーザンは首を振る。「まあ、スペンサー、子供じゃ無いんだから、あなた。その子の親がそんなことやるのは普通よ。憎み合っていない夫婦でもやる事よ。通常の場合、子供は何とかなるのよ」
How old are you? = あなた歳、幾つなの? = 子供みたいなことを言って、年齢疑う = 子供じゃ無いんだから
Of course they do that = もちろん彼ら(少年の両親)はそれ(子供を使ってお互いやり合う)をする = それをするのは当たり前 = そうするのは普通
“This kid isn’t going to survive it,” I said. “He is too alone.”
この子はダメだろう。誰も助ける人がいない。
Suzan was quiet.
スーザンは何も言わない。
He hasn’t got any strength, I said. “He’s not smart or good-looking or funny or tough. All he’s got is a kind of ratty meanness. It’s not enough.”
「その子には強さが無いんだ。頭が良いわけでも無いし、見た目が良いわけでも無い。面白くも無いし、根性も無い。あるのはイラついた意地の悪さだけだ。それだけじゃやっていけない」
Ratty とはドブネスミのような、みすぼらしい、貧相な、ロクでもないに加えて気の短い、イライラした、というニュアンスもある。ここではどれも当てはめられるが、日本語に訳す必要がなければ、言葉のニュアンス全体として感じていけば良いのだ。
まとめ
スーザンとの、何気ないバスケの会話や、少年の育つ環境についての微妙な意見の違いについて話すシリアスな会話を上手く混ぜているシーンだ。
意訳をすることで、意味やニュアンスが分かるだろうか?辞書の定義に則った日本語訳に捉われず、フレキシブルに内容を理解する作業は、自分が話す場面でも、日本語からいちいち英語に置き換えずに、内容のエッセンスを自然な英語でアウトプット出来ることにも繋がる。
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