[一緒に洋書 30] 会話のリズムではあるが、あまり意味が無い言葉、it’s just that…

A knight 英語レッスン
白馬では無いけれど

スペンサーの予想通り、離婚する両親の間に挟まれる少年の件は再び戻ってきた。

タイトルに出した、「It’s just that ~」は、言い難い事を切り出す時によく使われる表現。あまり意味が無いので教科書には出てこないが、実際にはよく聞く言い回しだ。今回は会話文が多く、現場の英語に慣れるのにはうってつけのセンテンスが多い。

その他には、Sarcasm の利いたジョークhave got to ~ の表現、Plaidの発音(プレイドではない)、would just as soon ~ の表現、now that ~ のニュアンスなどを解説。実際の物語の中に出て来た表現は忘れにくいのだ!

「初秋」ロバート B. パーカー

Patty Giacomin called me in April on a Tuesday afternoon at four o”clock. I hadn’t heard from her in three months.

パティ・ジャコミンは4月の火曜日の午後に電話をかけてきた。3ヶ月間、連絡はなかった。

“Could you come to the house right now,” she said.

「今すぐ家に来てもらえるかしら」、と彼女は言った。

I had been sitting in my office with feet up on the desk and the window open sniffling the spring sir and reading A Distant Mirror by Barbara Tuchman.

オフィスの窓は開けたまま、俺は脚を机に乗せ椅子に座って、春の空気の匂いを嗅ぎながら、バーバラ・タックマンの「ディスタント・ミラー」を読んでいたところだった。

Info

調べてみると、Barbara Tuchman はアメリカの歴史家で「A Distant Mirror」は14世紀の歴史を扱った本であった。

スペンサーが単なるマッチョな私立探偵では無く、ある程度の教養がある事をうかがわせる本の選択だ。

I kept my finger in my place while I talked on the phone.

電話で話す間、俺はページの場所を指で押さえていた。

“I’m fairly busy,” I said.

「結構忙しいんです」、と俺は言った。

“You have to come,” she said. “Please.”

「絶対来て、お願い」と彼女は言った。

Your husband got the kid again?”

あなたの夫がまた息子を?

“No. He’s not my husband anymore. No. But Paul was almost hurt. Please, they might come back. Please, come now.”

  「違います。あの男はもう私の夫ではないわ。違うの。でもポールは怪我をする寸前でした。あの人たち、また戻ってくるかも知れない。お願い、今来てください」

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“No” を2回言っているが、夫が少年を連れて行った訳ではない、というのと、離婚が成立している今、あの男はもう自分の夫ではない、という2つの点について「NO」と言っている。どちらがどちらを指すかはここでは重要ではない。パティのパニック状況下でのセリフであるのを感じよう。

“You in danger?”

「危険な状況に居るのですか?」

“No. I don’t know. Maybe. You’ve got to come.”

「いいえ。分からない。多分。来てくれなきゃダメ」

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Have + got to で、〜しなければならないという表現、覚えてるかな?

“Okay,” I said. “If there’s any danger, call the cops. I’ll be there in half an hour.”

「分かりました。危険を感じたら警察を呼んでください。30分でそちらへ行きます」

I hung up and put my book down and headed for Lexington.

俺は電話を切り、本を置いてレキシントンへ向かった。

When I got there Patty Giacomin was standing in the front doorway looking out.

俺が到着すると、パティ・ジャコミンは正面玄関口に立ち、外を見ていた。

She had on a white headband and a green silk shirt, a beige plaid skirt and tan Frye boots.

白いヘッドバンドに緑のシルクのシャツ、ベージュの格子縞のスカートに薄いブラウンのフライ製のブーツを履いている。

Info

スコットランドのタータンチェックを「Plaid」と言う。ちなみに発音は「プラッド」。「プレイド」と言わないので注意しよう。

オレゴンにはセブンイレブンのようなローカルチェーン店で「Plaid Pantry」というのがあるが、看板にはタータンチェックの柄があしらわれては、、、いない

Around her waist was a wide brown belt and her lipstick was glossy and nearly brown.

腰には幅の広い茶色のベルトが巻かれ、唇は光沢のあるほとんど茶色の口紅が塗られている。

Probably just got through scrubbing the tub.

Info

Would just as soon ~ で、〜の方が良い、〜をしたい という表現が出来るのを覚えよう。でも、あまり最近は聞かないような気がする。

風呂桶の掃除をやり終えたばかりなのだろう。

Yojo
Yojo

思わず笑ってしまう、スペンサーの典型的な皮肉ジョーク。

ちなみに「皮肉」は Sarcasm

 I said, “The kid okay?”

「あの子は大丈夫ですか?」と、俺は聞いた。

She nodded. “Come in,” she said. “Thank you for coming.”

彼女はうなづき、「お入りになって。来ていただいてありがとう」と言った。

We went into the hall and up the three steps to the living room.

我々は玄関ホールに入り、三段のステップを上がり、リビングへ行った。

Outside the picture window at the far end of the living room things were beginnig to bloom.

リビングルームの反対側のはめ殺しの窓の外にある植物には花が咲き始めていた。

“Would you like a drink?” She said.

「何かお飲み物はいかが?」と彼女は聞いた。

Same as last time, ” I said. “I will take a beer if you have one.”

「前回と同じで、ビールがあれば一杯頂きます」

She went to the kitchen and brought me back a can of Budweiser and a beer mug.

彼女は台所に行き、バドワイザーの缶とビールグラスを持って戻ってきた。

“I don’t need the mug,” I said. “I’d just as soon drink from the can.”

「缶から飲むので、ビールグラスは要りません。」

Somewhere in the house there was a television set playing. It meant Paul was probably in residence.

家のどこからかテレビの音が聞こえていた。ということは、多分、ポールは家に居るに違いなかった。

Patty poured herself a glass of sherry. “Sit down,” she said.

パティは自分のためにシェリー酒を注ぐと、「お座りになって」、と言った。

I sat on the couch. She sat across from me in an armchair and arranged her legs.

俺はカウチに座った。彼女は俺の向かいの肘掛け椅子に座り、脚を揃えた。

I looked at her knees. She sipped her sherry. I drank some beer.

俺は彼女の膝を見る。彼女はシェリー酒をすすり、俺はビールを飲んだ。

She said, “Was the traffic bad?”

「渋滞はひどかったですか?」、と彼女が聞いた。

I said, “Mrs. Giacomin, I galloped out here to your rescue. Don’t sit around and talk at me about traffic condition.”

ジャコミンさん、あなたを救出するために駆けつけて来たのですよ。優雅にくつろいで交通事情についての雑談はやめて欲しい。

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馬での早駆けが gallop だが、ここでの、「rescue ・救出」という、危機にある淑女を助けに来る騎士のニュアンスを受けている事を読もう。

Damsel in distress

“I’m sorry. It’s just that, well, now that you’re here, I feel a little foolish. Maybe I overreacted.”

「ごめんなさい。何と言うか、今、こうして来て頂いてみると、何だか大袈裟に反応してしまったようで、お恥ずかしいわ」

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ポピュラー小説を読むのが効果的なのは、こんな普通の会話文に触れられるからだ。

It’s just that… 以前にも出て来た表現だが、ほぼ意味は無い。ニュアンスは「何と言うか…

Now that ~ のニュアンスは「いざそうなってみると、実際にこうなった今

両方とも実際の会話ではかなり良く聞く表現だ。

また、I feel foolish は「自分自身馬鹿げたように感じる」だが「恥ずかい思いをする」という感じだ。

She sipped some more of her sherry. “But, dammit, someone did try to take Paul again.”

彼女はシェリー酒に再び口をつけた。「でも何者かが本当にポールを誘拐しようとしたのよ、まったく信じられないわ」

アナ訳

Dammit = Damn it 「ダム・イット」を早く言うと「ダミット」となる。その発音をそのまま綴っているわけだ。

Damn は「チクショー」などと訳されるが、強調、感嘆を表せれば、文脈によって様々な意味となる。

例えば、”Damn…” は「信じられないよ」みたいな感じで使える訳だ。

また、someone DID try の「did」もまた強調で、「本当に」というニュアンスを表現している。

“Your husband?”

「あなたの夫でしたか?」

“It wasn’t him, but I’m sure he was behind it.”

「夫ではありませんでした。あの男の企てであるのは確かですが」

“What happened?”

「何が起こったのですか?」

まとめ

ついに第7章まで来ました。どうかな?こうして読んでみると、英語の本もそんなに難しくは無いでしょ?しかも、今まで読んだ部分をもう一度読んでみると、全ての単語、文を検証した今、スラスラと英語の文章が頭の中に入ってくる。日本語を経由せずとも、物語のシーンはありありと頭の中に描かれる。

そんな情報のプロセスに慣れるのが言語の習得のベースなのだ。

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