今回も使える表現、「Rough it」 や、過去の習慣の「Would」、会話の中での仮定法、「As if」、「of course」の少し違う用法、付加疑問文のイントネーションによる微妙なニュアンスの違い、「Nope/Yep」 ってどう使うのか、俗語のCrapの解説など。会話ならではの、「教科書にでない英語」を文脈に合わせて徹底解説。
Early Autumn「初秋」by Robert B. Parket ロバート B. パーカー
“You men will have to rough it this weekend though,” she said.
「でも、今週末はあなた達、男だけでなんとかやってもらわなければいけないけれど」、と彼女は言った。
これは前回の会話で、パティが “You should at leat be treated right.”と言ったコメントからの流れで、”Though“が使われている。つまり、「少なくとも、ちゃんとおもてなししたい」”けれども”、今週末は「ラフ」よ、という訳だ。
Rough it = ラフにやる = 荒い = がさつで、上等ではない=スムーズにキメの細かい、上等なものではない = 必要最小限にやる = これでなんとかする
I ate a piece of bacon and a bite of egg.
俺はベーコンを一切れ、そして卵を一口食べる。
“I will be going away for the weekend,” she said.
「週末は出かける予定なの」彼女は言った。
I nodded.
俺はうなづく。
“I’m going to New York to visit friends.”
「ニューヨークへ友達に会いに行くのよ」
I nodded again and ate some more.
俺は再びうなづいて、もう少し食べた。
“I go down every month, go to the theater, to a museum exhibit. It’s very stimulating.”
「月に一度はニューヨークへ行くの。劇場へ行ったり、美術館の展覧会に行くの。とても刺激的だわ」
“Yeah,” I said. And finished up my eggs.
「ええ、」と俺は言い、卵を食べ終えた。
She ate a small bite of her egg.
彼女は卵を少しだけ口にする。
“Do you know New York, Mr. Spenser?”
「ニューヨークはよくご存知?スペンサーさん」
“I know what everyone means when they say that. I know midtown Manhattan.”
「皆がその質問する時、実際には何を聞いているのか、という意味で、知っていますよ。つまり、マンハッタンのミッドタウンは知っているという事です」
“Yes, I suppose that’s true, isn’t it. That is what we mean by New York when we go to visit.” She drunk some coffee.
「そうね、確かにそうだわね。ニューヨークを訪れるって言うのは普通はそういうことね」彼女はコーヒーを飲んだ。
“Who stayed with Paul when you’d go? Pinkerton man?”
そうやって外出する時は誰がポールの面倒を見るのですか?ピンカートン・マンか、誰か?
you’d go = you would go この”would“は、過去の習慣を表現する。
例:When we lived in Portland, we would go to the museum often.
ポートランドに住んでいた時はよく美術館に行ったものでした。
Pinkerton man は、1850に設立された私立警察。そもそも、列車強盗などを取り押さえるために始まったが、後には、労働組合などのストライキを潰すために雇われた。
ここでは、単に、有り得ない可能性の例を特に理由もなく挙げる、というジョークだ。
She smiled at me, “No, I hire a woman, Mrs. Travitz. normally, sometimes Sally Washburn would come in. I always got someone.”
彼女は俺に笑顔を見せた。「いいえ、女性を雇うのよ。いつもはトラヴィッツさん、時々はサリー・ウォッシュバーンに来てもらうの。 いつも誰かに頼むわ」
“You think Paul will mind staying alone with me?” I said.
「ポールは私と一緒に二人で留守番するのを嫌がりませんかね?」、と俺は言った。
She looked a little startled, as if I’d asked a dumb question.
まるで俺がくだらない質問をしたかのように、彼女は少し驚いたように見えた。
As if は「まるで〜したかのように」という意味だが、「〜した」というのは実際には起こらなかった事なので、「仮定法」となる。つまり、時制を一段ずらすのだ。
I asked a dumb question → I had asked a dumb question
“Oh, no. Paul likes you. He understands that I have to get away. That I must find fulfilment of my own. He realizes I can’t just be a mother, as I couldn’t just be a wife.”
「あら、そんな事はないわ。ポールはあなたが気に入っているわ。あの子は、私がたまには息抜きをしなければならないのは理解しているの。私が自分の楽しみを見つけなければならない事を。私は単に母親であったり、妻であったり、というだけでは満足できないのが分かっている」
“Of course,” I said.
「わかります」と俺は言った。
Of course はもちろん「もちろん」ではあるが、会話の受け答えで、「分かります」、「ご察しいたします」、とか「存じ上げております」的なニュアンスで、使われる事がある。
“it’s remarkable I think how long it took for women to realize the value and need of self-actualization,” she said.
「女性達が、自己実現の価値や必要性を認める様になるのに、こんなに時間が掛かったのは驚きだわ」、と彼女は言った。
この、”I think” は、挿入箇所なので、普通の語順では無いが、会話ではよくある。書くときは、実際には、”It’s remarkable, I think, how long~” とカンマを入れるのが普通だろう。
“Isn’t that amazing,” I said. “How long it took”
「こんなに時間が掛かったのは驚くべきですね」と俺は言った。
スペンサー風の皮肉ですね。英語で言うと
Facecious 。発音や、辞書の定義はこちらを参照。
“Yes, New York is my safety valve in a sense.”
「そう、ニューヨークは私の安全弁なの、ある意味で」
相手の言ったことに対して返答して、会話が成り立っていくと言うより、自分が言いたいことだけを言う、少しチグハグな会話は、パティの人柄を間接的に描写しているのを感じよう。
“Get a chance to shop while you’re there,” I said.
「ニューヨークではショッピングのチャンスもある」、と俺は言った。
She nodded. “Yes, usually I spend a day in Fifth Avenue.”
パティはうなづき、「そうよ、いつも1日は5番街に行くの」と言った。
“Ever take Paul?”
「ポールを連れて行った事は?」
“Oh, God, no. He wouldn’t have any fun and he’d just drag along. No, he’d spoil it. You don’t have children, do you?”
「絶対連れてかないわよ。あの子には面白く無いだろうし、嫌々付いて来ても、せっかくの外出が台無しだわ。あなたには子供は居ないのでしょうね。」
この Would も仮定法的に、「来たとしたら〜しただろう」と時制をwill から would にずらしている。
You don’t have any money, do you? と言う時に、付加疑問の部分を do you? と、youを強調してイントネーションを上げるか、do you? と、doを強調してイントネーションを下げるか、でニュアンスの違いが出てくる。
「お金、全く持ってないと思うけれど、もしかして持ってる?」
「お金なんて、一銭も持って無いでしょ」
どちらのニュアンスでも有り得るけれど、この文脈では、後者の、「あなたには子供が居ないのが察せられる」、と言う感じだろう。
“Nope.”
「居ませんな」
Nope (ノープ) = No
Yep(イェップ) = Yes
俗語というか、方言というか。人によっては、No/Yesの代わりに、ほぼ Nope/Yep としか言わない人もいる…。
She made a little snorting laugh.
彼女は短く鼻で笑った。
“You are lucky,” she said. “Twice lucky, you’re a man and you have no children.”
「あなたは幸運ね。2倍幸運だわ。男性であり、子供が居ない」と彼女は言った。
“What about self-actualization and stuff?”, I said.
「自己実現とか、そういう事はどうなったんですか?」と、俺は言った。
“I mean it. I struggle for that. But what good is it for a single woman?”
「真剣よ。懸命にそれを求めている。でも独身の女性にとっては自己実現が出来たとして何の意味があるのかしら?」
“Why is being married so important?”
「結婚している事がどうしてそんなに重要なのですか?」
“Because that’s where the bucks are,” she said. “And you know it.”
「結婚しているとお金が入るからよ。それはあなたも分かってる事でしょ」と彼女は言った。
“I’m not sure I know that, but I never been married.”
「分かっているのかどうか疑問ですな、一度も結婚した事が無いもんでね」
“You know what I mean. Men have the money. A woman needs a man to get it.”
「言っている事は分かるでしょう。男性はお金を持っている。女はお金を手に入れるのには男が必要なの」
“I wonder if Gloria Steinem makes house calls.”
グロリア・ステイネムは家庭訪問してくれますかね。
House call とは、医者の往診や、注文聞き、配達など、自宅に直接、住人のニーズに応えて訪問する事だ。
フェミニズム、女性解放、男女同権の運動の中心的人物、 Gloria Steinem が誰だか分かれば、かなり笑えるジョークだ。因みに僕も知りませんでした。

“Oh, that’s crap,” Patty Giacomin said. Her color was high.
「そんなのはクズだわ」とパティ・ジャコミンは言った。顔が上気していた。
このthatはフェミニズム運動を指している。
Crap = とは「排便する」事を下品に表現する言葉、つまり「クソをする」だが、さらに俗語化してクソやクズ、そして、無意味な/無価値、もCrap だ。
間投詞として、”Oh, crap!” 「ちくしょー」的にも使われる。
ちなみに、紛らわしく、間違えやすい言葉に「Clap /拍手する」がある。「L」と「R」の発音ミスでとんでもない事を言ってしまう可能性があるので注意しよう。
“You probably mouth the liberal line like everyone else around here, but you know what’s reality all right. Men have the money and the power and if a woman wants some, she better get hold of a man.”
「あなたもこのあたりの人々みたいにリベラルな文句を口にするんでしょうけれど、現実はどうなのか、あなたも知っているはずよ。男性はお金と力を持っている。女性がそれを手に入れたいのなら、男を手に入れるのが良いのよ」
Mouth は動詞として使われているのに注意。
Line にはセリフという意味がある。
I shrugged. I was beginning to see where Patty had picked up the habit.
俺は肩をすくめた。パティがどうして肩をすくめる癖を持っているのか分かって来た。

この「パティ」は「ポール」の間違いでは無いだろうか?肩をすくめる癖を持っているのはポールだし、こんな母親の話をいつも聞いているから、そんな癖がつくのだというジョークの意味も分かる。
“I know some folks who might argue with you,” I said. “But I’m not one of them. I am too busy counting my money and consolidating my power.”
「そんな意見に反論するだろう人々は居るでしょうけれど、私はそんなタイプじゃ無い。金勘定してパワーを統括するのに忙しいんでね」、と俺は言った。
まとめ
スペンサーとパティの会話が続くが、「何をどう話すのか」で、人柄は出る。外国語での、そんなニュアンスを体得するのには、小説を読むのが最高だ。通常の英語学習ではカバーするのが難しい微妙な言葉の背景を、出来るだけ解説しています。こういう読書の積み重ねは、実際に使える英語を身に付ける事に絶対繋がるのだ!
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